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長崎地方裁判所 昭和31年(行モ)1号 決定

申立人 川南工業株式会社破産管財人

被申立人 香焼村 外一名

主文

本案判決確定に至るまで右行政処分の執行を停止し、右物件を破産会社香焼島造船所機械工場より搬出することを禁止する。

(裁判官 林善助 田中正一 坂本喜美子)

執行処分の停止申請

長崎市梅ケ崎町四番    申請人 川南工業株式会社

破産管財人 弁護士 神代宗衛

同     同   伊吹幸隆

長崎県西彼杵郡香焼村  被申請人      香焼村

右代表者 村長 坂井孟一郎

長崎市桶屋町六一番地  被申請人    坂本平太郎

滞納処分執行停止命令申請事件

見積価格 六百弐拾参万円也

申請の趣旨

被申請人が破産会社川南工業株式会社に対して申請人管財中の四、五〇〇馬力デイゼルエンジンベツト一基及附属品一切一台について昭和二十八年九月十一日差押をなし昭和三十一年二月十三日四、五〇〇馬力デイゼルエンジン部分品約二百七十屯の表示により公売に附し滞納処分の執行は本案の判決確定に至るまでこれを停止し、且つ破産会社香焼島造船所機械工場外への右物件の搬出を禁止する旨の御裁判を求めます。

申請の理由

一、申請人等は昭和三十年九月七日長崎地方裁判所に於て破産の宣告を受けた川南工業株式会社の破産管財人である。

二、右破産会社に対し債権者株式会社親和銀行は破産宣告前昭和二十八年九月二日長崎簡易裁判所昭和二八年(ロ)第五六九号仮執行宣言付支払命令の執行力ある正本に基き長崎地方裁判所々属執行吏永尾初次郎により、前記破産会社香焼島造船所機械工場に於て前記申請の趣旨記載の物件について差押をなしたが同物件は昭和三十年九月七日の破産宣告により破産財団に所属するものである。

三、しかして被申請人香焼村は同破産会社に対する滞納処分の為右差押物件に対して昭和二十八年九月十一日現場に臨まず書類上丈けで二重差押をなしたが右村の差押は国税徴収法第十九条及民事訴訟法第五八六条に基く二重差押禁止の法規に違反した不当のものである。

四、それにも拘らず被申請人香焼村は申請人等の管理に帰属している申請の趣旨記載の物件を昭和三十一年二月十三日不当にも公売に附し長崎市桶屋町六一番地坂本平太郎がこれを価格六百二十三万円で競落した。しかも公売物件の数量は差押表示による物件の範囲を超えた不当のものである。

五、ところが右公売に関する被申請人香焼村から申請人に対する通知は昭和三十一年二月十三日長崎本局消印を以て発送され申請人等がこれを受領したのは翌十四日であつた。

六、従つて申請人等は右不当な公売につき被申請人に対し異議は勿論上級官庁に対し訴願をなす余裕は全然与えられなかつた。しかも本件物件の価格は競落価格によつても窺われる通り莫大なものであり普通訴願の方法によるときは右不当公売による滞納処分が終結し破産財団は取返しのつかない著しい損害を蒙ること必然であるので申請人等は行政事件訴訟特例法第十条第二項に基きその権利の保全救正を求める為本訴に及ぶ次第であります。

疎明方法

疎第一号   登記簿抄本

疎第二号ノ一 証明書

同   ノ二 同上

疎第三号   有体動産差押調書謄本

疎第四号   差押調書

疎第五号   公売証明書

疎第六号ノ一 公売公告送付書

同   ノ二 公売公告

同   ノ三 封筒

昭和三十一年二月十五日

右申請人 神代宗衛

同    伊吹幸隆

長崎地方裁判所御中

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